第8回徳島IoT活用研究会を開催(徳島経済同友会と共催)

2019年2月8日(金)、ホテルサンシャイン徳島におきまして、徳島経済同友会先端技術活用委員会との共催で、徳島IoT活用研究会(第8回)を開催しました。

今回は、現在注目が増してきている「RPA(Robotic Process Automation)」を学ぶ機会を設けたいと考え、日本電気株式会社(NEC)プラットフォームソリューション事業部エキスパート藤巻美菜子氏をお迎えし、「現代の働き方が抱える課題とRPA」の演題でご講演いただきました。

なお、本講演では、NECのオンラインコミュニケーションツール「Zoom」で会場につないだ上で、NEC AIプラットフォーム事業部(川崎市)の田中聡吏氏により遠隔からの説明も行われました。以下に講演の概要を記します。

講演概要

1.働き方改革とNECの取り組み

現在大きな話題に上っている働き方改革には、①15~64歳の労働力人口の減少、②働き方改革関連法制定など国の動き、③これからの世代の価値観、の3つの大きな変化が背景にある。①により、人手不足が顕著になり、「企業が人を選ぶ時代」から「人が企業を選ぶ時代」になった。②では、「残業時間月100時間未満」「有給休暇取得義務化」の規制が導入される。③では、大学生の意識調査では「個人の生活と仕事を両立させたい」の比率が高まるなど、価値観の変化が見られる。こうした中、育児や介護といった時間制約がある人も含め多様な人材に働いてもらうなど労働量の不足を補うことと、生産性向上や新たな価値創出による労働の質の向上が今後必要になる。

当社(NEC)は7つの「社会価値創造テーマ」を掲げており、その1つに「Work Style(枠を超えた多様な働き方)」がある。以前から働きやすい環境を整備してきたが、社員の年齢構成では40歳以上の割合が高まっており、今後介護離職者の増加も懸念される現状をみると、働き方改革をもっと進めなければならない。それまでの反省も踏まえ、2017年からプロジェクトを組成、2018年には専門組織を設け、「意識改革」「業務・プロセスの最適化」「インフラ整備」を全社で進めている。

この働き方改革、生産性向上に向け6つのテーマでICT利活用を推進しており、社内実践を通じて得られたノウハウをもとにソリューション提供につなげている。その1つが「業務共通化とAI・RPA活用による定型業務の自動化」であり、RPAも社内での利活用を経て市場化した。

 

2.RPA拡大の背景と現在・今後の立ち位置

ITR社の調査では、2021年度のRPAの市場規模について、17年の段階では82億円と予測していたが、18年では330億円と4倍以上上方修正された。非常に注目されているシステム技術である。また、現在は明確に指示された通りに動く「Class1」の段階である。今後はAIの機能が加わることで、指示を踏まえある程度考えて動く「Class2」、自ら考えて動く「Class3」へと進化していくことが予想されている。

多くの企業では業務効率化を進める一環として就業時間を減らしてきたが、得てして、単純かつ人手が必要な業務は残り、逆の高付加価値業務に充てる時間を減らしてしまうことがよくある。また、業務効率化の過程では、投資対効果の高い大規模業務はシステム化されるが、中・小規模業務ではされないことが多い。たとえば、あるシステムからデータを出力して別のシステムへ入力する、複数のシステムからデータを取得し集計して報告する、といったシステムの間をつなぐような業務は、単純ではあるが人がすることがほとんどである。

RPAは、PC上でのこうした定型作業をソフトウェアロボットが代行するシステムである。多くのコストや時間をかけずにこうした業務を肩代わりし、その結果として捻出した時間を高付加価値に充てることができるようになることから、注目されている。

 

3.実際の取り組みから得られたポイント

NECでは、2016年度からRPAの試行を始め、現在では全社的な展開を加速させている。この取り組みから見えてきたのは、①業務の見える化を進めること、②導入プロセスと対象とするポイントを明確化すること、③導入の体制・ルール等の作成・確認を進めること、が重要なことである。

また、導入を通じて、以下のことを学ぶことができた。

・まずは体験することが大事(意外と、できること・できないことが見える)。

・「業務標準化が先か、とりあえずRPAか」の考え方を明確に持つこと(業務標準化は、組織変更などとにかく時間がかかるが、効果は大きい。一方、RPAは最短で1ヵ月程度で導入できる)。

・通常のスクラッチ開発のシステムと同等の運用性は期待しないこと(通常のシステムは安定稼働が目的なのであまり変更されない。一方で手軽な作業を代行するRPAは手軽に変更することが可能、など)。

・RPAにこだわらないこと(たとえば、従来から利用しているエクセルの「マクロ」の方が使い勝手が良いこともある)。

・他社の例に引きずられないこと(同じ業務でも他社のシステムとは構成が異なることが多く、参考にはなっても、同等の効果が得られるとは限らない)。

・上質のRPAを導入し稼働させるためには、業務面、システム面、統制面などの担当者を最初から巻き込むこと。

 

4.RPAの特長

RPAは、大きくはサーバ型とクライアント型に分かれる。後者は、PC1台ごとにロボットをインストールして稼働させる形態であり、短期導入、小規模導入が可能である。前者は、サーバ本体に複数のロボットを並行稼働させることができ集中管理する形態である。費用や時間が掛かるものの、セキュリティや可用性などが高まるとともに、導入規模の拡大に伴ってスケールメリットが出やすい。

現時点での典型的な活用対象としては、データ登録(各種伝票入力など)、データチェック(経理や棚卸データなど)、データ集計(集計や注文書・納品書作成など)、システム連携(複数システム間でのデータ取得・受け渡しなど)の4つが挙げられる。共通しているのは、人的判断が不要なことである。

逆に、RPAによる代行が難しい、効果が小さい業務もある。人の判断が多く必要な業務、様式が多数ある紙のインプットが必須の業務(現在のOCRの精度では正確性が不十分なため)、変化のある業務(条件で異なる処理が必要な業務は苦手)、複雑過ぎる業務(通常のシステム化が低コストになる場合)の4つが挙げられる。

こうした特長を踏まえた上で、働き方改革、生産性向上を目的としたRPAの導入を検討してもらいたい。

 

本講演の途中では、NECが提供している「NEC Software Robot Solution」の映像によるデモンストレーションが行われました。その中で、ロボットの構築はプログラミングではなく「操作対象のキャプチャ」と「操作内容の部品指定」で行えることが紹介されるなど、システムそのものの「難易度」はあまり高くないと思われました。

本講演を通じ、業務改革を進める上でRPAは強力な武器の1つである、と認識することができました。